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2008年3月25日火曜日

朝日新聞より

天声人語

『「信なくぱ立たず」は孔子の言葉である。政治が民衆の信を失えば世の中は崩れる。ずばりと突くだけに座右の銘にする政治家は多く、元首相の三木武夫氏は好んで色紙に揮毫(きごう)した。小泉純一郎元首相もよく口にした。
▼食糧よりも軍傭よりも、治世に大切なのは「信」だと孔子は言ったそうだ。その「信」がやせ細り、立つ瀬もなくなった政治のさまが、本紙の世論調査で浮かび上がった。政治家を「信用している」という人は18%しかいなかった。
▼うち17%は「ある程度は」という留保つきだ。きっぱり信を置く入がたったー%とは、乱世を生きた孔子先生もあきれ顔だろう。そればかりか官僚への信用度も、政治家と同じ数字に沈んだ。政と官。 「公」の屋台骨を支える両者が、枕を並べて討ち死にの体である。
▼政官のやることなすことが、失望を招いてきた。大きいのはやはり年金か。「最後のお一人まで」と見えを切つた前首相はとうに去り、懺悔(ざんげ)や謝罪は風の便りにも届かない。信じなけれぱ欺
かれることはない。むなしい処世を政治が広めたとしたら、罪なことである。
▼言葉を弾丸にたとえるなら、信用は火薬だと、作家の徳富蘆花(ろか)は書いている。火薬がなければ弾は通らない。つまり相手に届かない、と。福田首相は日々に火薬を減らすのか、 「他人事(ひとごと)節」は、ますます遠い声になる。
▼かつて当たらないものの代名詞だった天気予報は、同じ調査で94%の信用を勝ち得ていた。雨のち晴れ。国民も本心では、こんな展開を政治に待ち望んでいるはずだ。

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